印刷会社とのやりとりで注意すべき3つのポイント
― 入稿形式・色味の確認・納期の伝え方 ―
トラブルを防ぐ“現場のコミュニケーション術”を徹底解説!
「データは完璧に作ったのに、なぜか印刷でトラブルが起きた」
そんなケース、実は**“印刷会社とのすれ違い”**が原因であることが多いんです。
本記事では、**現場歴20年の筆者が、実際の失敗や成功体験をベースに、
印刷会社とのやりとりで注意すべき「3つの超重要ポイント」**をわかりやすく解説。
印刷トラブルを未然に防ぎ、スムーズで信頼されるコミュニケーション術を伝授します。
✅ この記事で伝えたいこと
- 入稿時の「ファイル形式」「アウトライン化」「リンク切れ」などを回避する具体的手順
- 色味ズレを防ぐためにやるべき「データ側の配慮」と「印刷会社との調整ポイント」
- 納期を確実に守るための「逆算思考」と「トラブル時の対応フロー」
― 入稿形式・色味の確認・納期の伝え方 ―
1. 「完璧なデータのはずなのに、なぜ…?」
印刷での失敗は、デザインのミスより**「印刷会社とのすれ違い」**で起きることが多いんです。
たとえば――
✅「aiで入稿したのに開けない」
✅「仕上がった印刷物の色味が全然違う」
✅「納品日を伝えたはずなのに間に合わなかった」
こういったトラブル、デザインのクオリティに関係なくコミュニケーションの部分で発生しているケースがほとんど。
データが正しくても、“伝わっていなければ意味がない”。
だからこそ、「印刷会社との会話力」=データ+確認+配慮の力が問われるんです。
2. 入稿形式は“印刷会社によってルールが違う”
印刷トラブルで一番多いのが「入稿形式のミス」です。
形式って、何となく「PDFにすればいいでしょ?」と思いがちですが、実は印刷所ごとに細かくルールが違うんです。
▼ たとえば、こんな失敗例
- Illustrator(.ai)データを入稿したら、「バージョンが古くて開けません」と返された
- リンク画像を忘れて、「文字だけのデータが印刷されてしまった」
- PDFで入稿したつもりが、トンボや塗り足しが入っていない軽量版で印刷に…
どれも、ちょっとした確認不足が命取りになります。
3. 安全な入稿のために、今すぐできる実践ノウハウ
✅ Illustratorで入稿する場合:
- 文字はすべてアウトライン化
- 画像はリンク切れがないか確認 or 埋め込み
- 使用したフォント・リンク画像も一緒にzipでまとめる
✅ PDFで入稿する場合:
- 書き出し形式は「PDF/X-1a(日本)」を指定(色・トンボが安定)
- トンボ・塗り足しを含めて書き出す
- ページズレやサイズミスがないかPDF上で確認
✅ その他のポイント:
- 入稿前に、印刷会社の「入稿ガイド」を必ず読む!
- わからない部分は事前に問い合わせる(確認のひと手間が命を守る)
- 「一度問題がなかったから、次も大丈夫」は危険。印刷所が変わればルールも変わる!
4. 色味のトラブルは、印刷現場では“日常茶飯事”
「画面では明るい青だったのに、印刷したらくすんだネイビーに見える…」
「クライアントから“思ってた色と違う”と言われて刷り直しに」
――これ、どれだけ経験を積んでも起こりうるトラブルです。
色というのは、**モニターの表示と紙の出力で“前提が違う”もの。
RGB(光の色)とCMYK(インクの色)の違いはもちろん、
印刷会社によってインク・用紙・機械・湿度の条件も異なるため、“同じデータでも違う結果になる”**ことがあります。
5. 色味トラブルを防ぐためのノウハウ(データ編)
✅ カラーモードはCMYKに変換してから作業する
- RGBで作ってしまうと、後からCMYK変換したときに色味が大きく変わる
- 特に蛍光系・青・赤の発色が落ちるので要注意
✅ カラープロファイルを設定する(できれば印刷会社の推奨に合わせる)
- 例:「Japan Color 2001 Coated」など
- Photoshop・Illustratorでプロファイルを埋め込んでおくと、再現性が上がる
✅ 写真や色面は“彩度を抑え気味”に調整する
- モニター上ではちょうどよく見えても、印刷では“派手すぎる”or“くすむ”可能性があるため
- 特に赤・青・紫系は要調整(自然光で見てバランスをとる)
6. 印刷会社と「色のすり合わせ」をする方法
▼ 現場でやっているちょっとした工夫:
- 前回と同じ色味にしたい場合は、“過去の印刷物を同封”して入稿
→ 印刷所が参考にしてくれて、近い色で仕上げてくれることが多い - 「色校正あり」で進行する
→ 高額ではあるが、重要な印刷物(パンフ、カタログなど)では安心材料になる
→ 本機校正(実機での試し刷り)か、簡易校正(擬似的な色再現)を相談して決める - クライアントへ「印刷では多少の色味差が出る可能性があります」と一言伝えておく
→ 誤解やクレームを未然に防げる魔法の一言!
7. 「納期遅れ」は“伝え方”でほぼ防げる
どれだけデータが完璧でも、
納期が間に合わなければ、すべて台無し。
しかも印刷業界では「土日・祝日を除いた営業日」でスケジュールが動いているため、
ちょっとした確認不足で1〜2日遅れが発生することも珍しくありません。
▼ よくある納期トラブル
- クライアントと印刷会社で「納品日」の認識がズレていた
- 再入稿が発生し、印刷スケジュールに影響
- 「即日納品OKですか?」と聞いたら「営業3日後です」と返されて慌てる…
8. “逆算の習慣”が納期を守るカギ
納期トラブルを防ぐには、「逆算スケジュール」が鉄則です。
✅ 納品日から逆算する基本フロー:
- 納品日(いつ手元に必要?)を確定させる
- 印刷日数を引く(通常2〜3営業日+加工があれば+α)
- 校了日を決める(修正がある前提で2日前後余裕を見る)
- 初回提出日を確保(必要があれば仮データも送る)
✅ 例:木曜納品希望の場合
- 印刷:月曜〜水曜(3営業日)
- 校了:前週金曜
- 初回提出:前週水曜 or 木曜
→ 余裕がないようで、これでもギリギリラインです!
9. 現場で信頼される“納期の伝え方”はこれ
- 「◯月◯日午前着希望、校了は◯日までに完了予定です」
→ 具体的かつ、作業者の視点に立った伝え方 - 「念のため1日余裕を見ていますが、最短で仕上がる場合はご相談可能です」
→ 交渉余地がありつつ、印刷所にプレッシャーをかけすぎない配慮 - 「トラブルが起きた場合、当日朝までにご連絡ください」
→ 緊急対応のための連絡フローも共有しておくと◎
10. まとめ:印刷は“データ+伝え方”で仕上がりが決まる
入稿形式、色味、納期。
この3つを押さえておくだけで、ほとんどの印刷トラブルは防げます。
でも、さらに大事なのは、
「相手にわかりやすく伝えること」。
- 「この形式で大丈夫だろう」ではなく、「この形式で間違いありませんか?」と聞く
- 「納期は〇日」とだけ言うのではなく、「〇日納品のために、逆算でこの日が校了」と伝える
- 「色は合ってると思う」ではなく、「前回に近い色でお願いします」と根拠を添える
印刷は、人の手と機械と、そして“やりとり”で出来ています。
良い印刷物は、良いコミュニケーションからしか生まれません。
📘次回予告
【第9回】印刷物の色味を“思った通り”に仕上げるための現場テクニック
モニター/プロファイル/色校正――印刷の「色合わせ」を制するための実践ノウハウを紹介します!
🔰このシリーズについて
本シリーズでは、広告代理店で20年以上印刷物を手がけてきた筆者が、
**「現場で本当に役立つ印刷ノウハウ」**を、初心者にもわかりやすく全20回でお届けしています。
「データは完璧に作ったのに、なぜか印刷で失敗した…」そんな悩みを解決するヒントが満載です。